インターネットでの医薬品の規制緩和について厚生労働省いわゆる政府側と民間の楽天の社長が意見の違いで法廷闘争するだのしないだのと騒いでいると先週書きました。今回はその続きです。口に入るものは皆一緒と考えれば一般のスーパーで売られている食品と同じわけで、医薬品のネット解禁も至極当然ということになります。一方、薬は体を治すための特別な合成品で普通の食べ物とは違い重大な副作用も考慮しなければいけないと見なすならば、厚生労働省が薬局の対面販売で購入できる医薬品の一部をネット販売では認めないという意見も出てくるわけです。例えば食品でも生産者が故意ではないにしても人体に有害な物質が混入することもあります。過去には殺虫剤入り餃子が輸入されました。そこまで考えればどっちが正しくどっちが間違いかとは言えなくなってくるわけです。
それではまず医師としての意見を述べます。どんなに素晴らしい画期的な薬でも未知の医薬品の場合何が起こるかは5年から10年程度は実際に使用してみないとわかりません。過去にも肺癌の薬でイレッサという新薬がありましたが大騒ぎになりました。そしていろいろ調べていくうちに副作用が起こりやすい集団と起こりにくい集団が判明して、現在では使い分けができるようになっています。しかし最初にケチがつくと素晴らしい薬でもなかなか名誉挽回は不可能です。だからある程度期間が過ぎて副作用がほぼ出尽くして安全性の高い医薬品に限り薬局での対面販売で購入できるようになっている現在です。それでもペニシリンなどの抗生物質は世に出てから半世紀も経過していますが薬局での販売さえ許可されていません。つまり詳細まで知りつくされていても素人に危なっかしい薬は医師の処方が必要なのです。この議論に関してはネット販売関係者も異論がないわけです。
ではちょうどその間のグレーな部分、そうですね、いつも問題はこの範疇から湧いて出てくるのです。胃薬やアレルギーなどの薬はそんなにひどい副作用はないので薬局で対面販売しているのならネットでもちゃんと説明すればいいじゃないかというのがネット関係者の言い分なのです。それは理にかなっています。しかし厚生労働省はそれでもちょっと待ってと言っているわけです。過去に薬害にあわれた患者さんやご家族を例に挙げて国は患者さんつまり消費者の味方であり「ネット解禁待った!」というわけです。もし私がIT関係の職種でしたら「ネット解禁、大賛成!」と叫ぶのでしょうね。このように表裏一体の面がありどちらも正しくまちがってないわけです。「政治は妥協の産物」と昔から言われていますが、まさにそこが問われているのです。
話は飛躍しますが、先日のプロ野球球団楽天の優勝記念セールのネット販売で不当価格表示がありましたが、世の中はそのようにグレー部分でルールを破る輩がいるわけです。医薬品のネット販売全面解禁を訴えるなら、そのようなルール違反をしないようなしくみにしないと結局は国民に被害のつけがまわってくるのです。その時にどこかの化粧品メーカーや鉄道のようにトップが「ごめんさい」と言っても被害者の傷は癒えないわけです。
椎ちょんへ
医薬品のネット販売について、色々な視点からの説明をありがとう。
やはり医薬品ネット販売のルールをまず確立することが最優先だと思います。
議論のないまま、副作用のリスクがある医薬品を含めネット販売することは、
少し不安な面もありますね。欧米での実績も参考にすべきだと思いますが。
K.Kより
K 君へ
いつもコメントありがとうございます。個人的意見としては薬なんて飲まなければ飲まないにこしたことはないのです。風邪をひいても薬をのまずに安静にしていれば5日もすれば改善することが大半なのです。私の仕事は薬を処方するのが仕事ではなく、いかに薬を飲まないように人生を送れるかを見極めてあげることだと考えています。逆にいうと「死ぬまで薬をのまなきゃダメ」と断言しなければならない患者さんをしっかりとみつける仕事でもあるわけです。だから風邪薬などの副作用の危険性が非常に少ない(決してないとは言いません、なぜなら風邪薬でも何万、何十万人に一人は重大な副作用が出ることだってありますので)場合はネット販売も一つの手段だと思います。椎木
椎ちょんへ
ごもっともな意見ですね。
これからも薬に頼らない体調管理に努めていきたいと思います。
K.Kより