前回のあまちゃんの続きで、今回は「地方はアツイぜ!」について。今回のドラマでは地方に焦点を当てています。生まれも育ちも大都会の主人公アキ(能年玲奈)は母(小泉今日子)の故郷に初めて行き、見るもの出会うもの全てが目に新鮮に映ります。しかし田舎の人々の目にはその新鮮に映るものを見慣れてしまっていて「そんなものがどうして新鮮なの?」って感じです。逆もしかり。主人公の親友(橋本愛)が東京に出て「アイドルになるぞ!」と地元の無人駅のホームから東京まで線路が伸びるトンネルに向かって叫びます。トンネルの向こうに光り輝く出口が見えますが、その先に何があるのか見えません。
今から30年前に山口の片田舎から大学進学で上京しました。住んだのは中央線沿いの阿佐ヶ谷で学校は西新宿の超高層ビル群の一角にありました。田舎から上京した二十歳前後の自分にとり「大都会で見るもの全てが新鮮!」でした。例えばマクドナルドや吉野家の牛丼でさえ地方にはなく新鮮だったのです。勿論、新宿駅を歩く数珠のように連なる人、人、人。じぇじぇじぇでしたね。しかし6年経って山口に戻るときは、その大都会は自分の一部に溶けこみ新鮮味などなくむしろ愛着が湧いていました。「住めば都ですよね」田舎も都会も。東京生まれが都会が地元で愛着をもつことと全く変わりありません。
また主人公アキのじっちゃん(蟹江敬三)は遠洋漁業で1年近く故郷に帰りません。そして孫にこう言います。「俺から見りゃ、北三陸(東北の田舎町)も東京も日本にかわりはねえ!ここが世界で一番素晴らしい場所だってことを田舎から出たことのない元祖アイドルの夏ばっぱ(宮本信子)に教えるために、おらは船さ乗って世界中を周っているだ!」という一言。アキは「かっけえ!」と叫びますが、同時にそれは視聴者の私の叫びにも聞こえました。田舎にはたくさんの素晴らしいものがありますが、見慣れると新鮮さがなくなり自分のところは活気がないと思い始めます。都会は都会で刺激的ですが、本当に魅力的な町ってどういうものをさすのかを今回のドラマで考えさせられました。外見のかっこよさやスマートさやきらびやかさ、そしてゼニはたくさん都会に落ちていることに間違いありません。しかし本当に自分が生まれ育った環境がどれだけよいかは、外に出て見つめ直さなければわからないことも確かです。「地元に帰ろう」という挿入歌もドラマで流れていましたが、大学を卒業して地元に帰って約25年、最初は都会と比較していましたが、最近は比較すること自体ナンセンスだと思いますし、地元慣れして感覚も麻痺しています。
現在、地方の商店街は疲弊してシャッターが閉まり、一方で都会は億ションや多くの店や施設が増え、更に東京五輪で再びミニバブルになりつつあるとテレビで放映しています。「景気が悪い」だの「都会は良い」だのと愚痴をこぼすよりも「田舎は大都会よりもかっけえ!」と思いっきり都会に向かって叫んで自らが変わっていかなければいけないのではないでしょうか?クドカンさんのこのドラマに込められたメッセージには「地方はアツイぜ!」って日本中の人々に叫んでほしいのではないかと勝手に推測しています。