当院の紅葉を眺めながら

朝晩冷え込みが厳しくなると山々の紅葉が一気に進んできます。自宅から眺めても山々の緑色の中にポツポツと燃えるような紅色が見えます。また周辺にはイチョウ並木の街路樹も多く、道端には銀杏を踏みつぶした跡に黄色い扇子がたくさん舞っています。木の葉がなぜ紅く染まるのかご存知ですか?緑の葉っぱは葉緑素により夏は栄養分をたくさん作りますが、秋から冬になると光が弱くなり光合成があまりできなくなります。そして葉っぱと枝が次の春まで一旦リセットして切り離す行為をする際に、葉っぱに残った養分が紅く変化するのだそうです。イチョウなどは紅く変化できずに散っていきます。これは子供の国語の教材に書いてあったパクリですが。

天津恵さんのモニュメント1当院の入り口のやまほうしは周囲の山より暖かいためか一般の紅葉よりも遅く、11月末に紅く染まります。朝の落ち葉の掃除は大変ですが、今しか鑑賞することのできない光景です。当院を建て替えた時にやまほうしを植えましたが、やまほうしのすぐ前に以前ブログで紹介させていただいた天津恵さんのモニュメントがそびえています。そびえているといっても2メートル強のバレーボールのネットくらいの高さです。毎年この時期のほんの1週間程度ですが、やまほうしの木の葉っぱが真紅に染まってモニュメントにとてもマッチします。生きているやまほうしの紅と人工物の赤が微妙にコラボレーションします。日もすっかり沈んだ暗闇の中にモニュメントを照らすライトが当院の反射ガラスに紅と赤を映し出します。この光景を見る頃にはまた今年も残り1か月かなあと思いをはせます。院内にはクリスマスツリーの準備がされてキラキラと光っています。そして1週間もすれば葉っぱは全て落葉してしまっていよいよ冬本番へと突入していきます。

天津恵さんのモニュメント2毎年、この時期になると夜の真っ暗な病院内からその光の浮かびあがった光景を30分くらいボーッと眺める日があります。いつとは決めてないのですが、仕事を終えてなんとなくその光景を見入るときがあるのです。その時に決まって思うことは、「今年も無事終えることができそうだ。また来年もこの光景を変わらずに見ることができますように」とある意味、願掛けも伴っています。もう少しで半世紀に達してしまう自分とこれからもう半世紀後には多分いないであろう自分。人生は儚いものとつい郷愁に浸っている自分。あと10年後には自分の親は健在だろうか?20年後には子供たちはどんなに成長してどんな大人になっているのだろうか?自分たちはどのように老いていくのだろうか?そんなことを考えているとすぐに時間が過ぎてしまいます。

寒い冬を越して春になると木々の新芽が顔を出します。桜の花が一斉に咲きほこりその満開の花を楽しむのも束の間2週間もすれば葉桜になってしまう頃、当院のやまほうしの枝にも新芽が勢いよく芽吹いてきます。まるで子供がすくすく成長するかの如くに。そしてやまほうしの年輪が一つ増えれば私たちの皺や白髪も一段と増えます。決して肉体的に若返ることはありませんが、知という年輪は確実に厚みを増しています。

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