「食動楽カルテ」完成までの秘話

秘話って書きましたが、そんなにだいそれたことではないのですが、「もし、自分が病気にかかって医師から薬を飲むようにアドバイスを受けたらどのような行動をとるだろうか?」ということを常々考えます。自分のもって生まれた性格でしょうか?もともと薬を飲むことが好きではないことも一理あります。このような理由から、この14年間一貫して変わらないことはいつも治療開始にあたり「本当に薬が必要なの?」という自問自答の繰り返しをしてきました。勿論、前回お話したように「薬を飲まなければ、やばいよ」という患者さんには初対面でも即決で薬を飲んでいただきます。しかしちょっと待ってと一呼吸おける患者さんには薬はなるべく処方しないようにしているのです。「なぜ?」って質問が聞こえてきそうです。その質問に対しては、「生活習慣病の場合は一旦薬を飲みだしたら、事実上死ぬまで飲まなければならなくなります。なぜなら生活習慣を自己管理できないのだから、薬を飲み始めるわけでしょう。もし改善できるならとっくに自己管理できて、当院を受診することもなかったでしょう」といつも患者さんに説明しています。

自分が思うに自己管理とは大変苦しいものです。また医療機関でも食事指導ではなかなか治療困難なことは百も承知なのです。しかし少しでも自己管理の可能性があればトライしてみていただき、それでも改善が見込まれなければ、患者さんも「もう、あきらめたので薬を飲むのもやむなし」と言われます。そのような私と患者さんとのコミュニケーションを伴った人間関係を築くことができれば、今後の患者さんとの医療に関してもうまくいくのです。それをいきなり血液検査で高値だからという理由だけで薬を処方すると、患者さん自身が薬を飲んで検査値が下がると治癒したと勘違いして自己中断してしまうことが多いのです。そうするとこの状況を人生ゲームに喩えれば、一回休みになるならまだましな方で、最悪10コマ後方に戻されたり、そのまま破産宣告を受けることもあるのです。

そこで以前から食事指導に興味を持っていましたので、簡単な自家製パンフレットを作成して患者さんにお渡ししていました。また当院では管理栄養士の先生に月1回来ていただいて、食事療法を専門的立場から30分から1時間程度でお話をしていただいています。その説明も難しい説明ではなく具体的に誰にでもわかりやすい説明で、薬を内服する前に何をすべきかをアドバイスさせていただいています。

そのような折にこのようなパンフレット作らないかと周囲から勧められました。自分でも作るなら既存のパンフレットではなく、当院オリジナルのパンフレットを作りたいと思っていたために、今回の運びとなり成就したわけです。道中、いろいろ相談しては「これではありきたりだねえ」とか「もっと患者さんにインパクトを与えるには自分に置き換えてみて、身近なことで共感できなきゃダメよね」とかさまざまな意見がでました。そのような気持ちを十分に組み込んだ内容に仕上げたつもりです。完成品を手に取った瞬間、自分にとって大きな仕事がひとつ終わったなという満足感で一杯になりました。

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