先日、洋服の青山に家内と次男の3人で行きました。次男の今年度入試面接用スーツ購入が主な目的です。昨年の現役時の面接は学生服で問題なかったのですが、浪人になると流石に学生服を着ると滑稽でしょう。しかし普段着で面接を受けるわけにもいきません。そうなると必然的にリクルートスーツの登場になります。そのための勝負服がこの秋に必要になりますが、春に購入しておかないと秋には間に合いません。
普通のサラリーマンならスーツとネクタイは当然でそれが勝負服になります。ところが医師はスーツにネクタイはどこかのお偉い教授や病院でも役職のある医師に限られ、通常の機動部隊である若手はポロシャツに白衣を着ている医師も多いのです。大学病院や市中病院に在籍している時は御多分に漏れず私もその一人でした。教授回診でも若手医師の作業着は変わりませんし、上司も部下の見た目に関しては無頓着な人が多いのです。またポロシャツに白衣を着ずにベンケーシー型の白衣を着る医師や最初から手術衣を着ている者も結構います。それだけ医療業界はスタイルにこだわる伝統はなく腕と頭の勝負ですので周囲は見た目をあまり気にしません。しかしそんな普段着にこだわりのない医師もなぜか学会に出席する時だけはスーツとネクタイと相場が決まっているのです。個人的にはしょうもない慣習としか思っていませんが、それでも紳士服業界を応援していることに間違いはありません。初対面で知らない医師のスーツとネクタイを見てもそれなりに似合っているように見えるのですが、普段からよく知っている同僚が学会で発表する時にスーツとネクタイをしていても普段を知っているので、その姿は借りてきた猫のようで全くと言っていいほど似合っていません。首から下はまともなのに髪は寝ぐせのままで、当直明けのその足で学会に来たのかは知りませんが、髭ボウボウの医師も少なからず目にします。一方で営業などの職種の方は見た目で決まると言っても過言ではありません。勿論、見た目の後の話題や専門知識も必要ですが、最初に好印象を勝ち取るための身だしなみは医師と異なりとても重要です。第一印象で相手に好感を持たせるかどうかでその後の展開が大きく変わります。特に飛び込み営業などではスーツとネクタイでさえも昨今の詐欺まがいの勧誘が多い時代では信用されませんが、スーツを着ていなければ論外で門前払いのケースがほとんどでしょう。相手を信用させ自分を有利に導くためには勝負服が必要なのです。
40年前の昔々、大学の入学試験の面接で私は現役のため学生服を着て勝負しました。周囲の浪人生はほとんどがスーツとネクタイだったことを今でもよく覚えています。しかし中にはTシャツにジーパンという強者もいました。その方が同級生になったのかどうかは当時の記憶として定かではないのですが、この歳になって世間のしくみが少しわかってくるとそのようなラフな受験生でも自分が面接官ならマイナスをつけないのではないかと思います。やはり人は見た目ではありません。しかし次男の入試面接ではリクルートスーツが勝負服になります。歳をとるにつれて本音と建前をうまく使い分けるようになります。