さいとう・たかを氏が2021年9月24日に膵臓癌で亡くなられました。あらためてご冥福をお祈り申し上げます。さいとうさんは言わずとも知れたゴルゴ13の生みの親です。私も学生時代から喫茶店にあった単行本をほとんど読みました。社会人になってからはあまり読まなくなりましたが、それでも本屋さんで漫画コーナーに単行本やビッグコミックが並べてあるとついつい手に取ってしまいます。内容は水戸黄門と同じなのですが、毎回その話題の背景を読むと現在の世界情勢の複雑性が新聞を読んだりニュースで見るよりもわかりやすく解説されているのにはいつも感心させられます。一方で日曜の夕方になるとサザエさん症候群になるサラリーマンもいます。私もご多分に漏れず開業してからある程度自分の時間に余裕が出てくると毎週日曜の夕方になると憂欝になることがしばしばありました。これもパブロフの犬と同じ現象でいつも同じ環境に置かれると同じ思考機能が働き憂鬱になります。慣れとは恐ろしいものです。
それでは少し話題を変えてなぜゴルゴ13とサザエさんはこのような長寿連載や長寿番組に成り得たのでしょうか?例えばその他に長寿番組では過去を紐解くと「8時だよ、全員集合」やクイズ番組があります。特にクイズ番組は司会者が変わればその後に続いても一区切りとなります。最近でいえば「科捜研」や「相棒」などもその域に達しているのかもしれませんが、いずれ最終回がやって来ます。それは主人公の交代や不在が大きいのです。一方で漫画など架空の人物であればゴルゴ13もサザエさんも永遠に歳をとりません。歳をとるのは声優のみで声優の交代は過去に何度もありました。原作者が亡くなられたら事実上終了するのかと昔は思っていましたが、そうでもなさそうです。結局、架空の人物は次世代の制作者に引き継がれて永遠の命を授かって生き続けるのです。もう一つ長寿連載には特徴があります。それは日常些細なことを題材にしていることです。ですから「フジ三太郎」や「あさって君」も長続きしたわけです。ゴルゴ13は国家間の紛争を背景にした複雑な人間関係の中での要人暗殺が永遠に繰り返されます。人類は戦いを好み相手より少しでも優位に立とうとする習性がありそれが永遠に続いていきます。「戦争のない世界」は理想の世界ですが、侵略や攻撃などが我が身に降りかかればいやおうなしに戦わなければならなくなります。結局、最後は「人類の欲望」にいきつくのかなとも思います。仮に武器による戦争が無くなったとしても、お金を使用して戦争と同じように相手を打ちのめすことは世界中を見渡せばきりがありません。
そのような人間の負の側面についてお話しましたが、長寿連載ものはこのようにごくありふれた人間の普段の生活や人間と人間の欲望のぶつかり合いを題材にして尚且つ現在の世界情勢を取り入れたフィクションが多く、それならば永遠に描き続けることができるのでしょう。読者は「同じ人間の行為に一番関心を持つ」のです。「ドラえもん」も長寿番組ですが、奇抜なアイデアを生み出すために原作者は大変苦労されているのかもしれません。