10月10日に新規開設診療所に対して中四国厚生局から保険診療に関する個別指導がありました。指導と言っても一般人には何のことかさっぱりわからないと思いますので簡単に説明すると医師免許を持っている者が患者さんに保険診療即ち健康保険証を使用して診療を行う場合には保険診療とはどういうしくみでどのようにして適正に行わなければいけないかという座学の講習指導を受けてその約1年後に本当に実践でちゃんと行われているかどうかを厚生局が確認指導する事です。つまり全額自費負担をする自由診療ではこの指導は不要なのですが、ほぼ99%の医師は保険診療をするため必ず受けなければいけない関門なのです。また新規に開業する時には必ず受けなければなりません。普通は1回きりで余程の事がない限りその後に2回目の指導はありません。しかし私の場合は20年前に地元に戻って父の診療所に入職した時に第1回目の新規個別指導を受けました。その当時はまだ保険診療の内容を完全に理解できていませんでしたので当局の指導医からいろいろと懇切丁寧に教えていただきました。当時の指導はとても和やかな雰囲気で今でもはっきり覚えています。そしてその当時の指導がその後の日常保険診療に生かされています。当時は20年後に2回目の指導を受けようとは思いもしませんでした。
今回は父が亡くなり診療所の開設・管理者が私に交代しましたので建物などシステムは全く変わりないのですが、新規の診療所として厚生局に登録されましたので2回目となったわけです。事前にその情報は知っていましたので昨年の継承時から今日を目標にしっかりと準備してきましたのであまり不安はありませんでしたが、それでもお上の指導ですので終わるまでのこの1年半のプレッシャーやストレスははかりしれませんでした。例えれば真面目に税金を納めているのに税務調査が入ると言われた時のあの気持ちと一緒です。自分は何も悪いことはしてないのに何かケチをつけられるのではないかという目に見えない不安と表現すればよいでしょうか。普通に道で会えばただの人ですが、この時ばかりは相手が自分とは世界の異なる敵に見えて今にも一戦交えるのではないかという緊張感が漂います。そして指導医も普段なら仲間ですが、この時ばかりは敵で同志には見えません。相手の指導医も大変だと思いますが、情けなんてかけられません。1週間前に指導内容が通知されると当日までの1週間は臨戦モードに突入してアドレナリンが出っ放しです。
当日は午後2時からですが、早めに出発して30分前には到着して控室でドキドキしながら待ちます。喉もカラカラのまま1時間の指導の開始です。今回の指導医は20年前の指導医より質問が厳しかったのですが、20年の経験としっかりと準備してきましたのでほぼノーミスでクリアしました。一部不備も指摘されましたが最後の講評ではほぼ合格でした。最終的には後日文書で合不合格が通知されますのでまだ油断はできませんが、肩の荷が下りたことにはまちがいありません。今回の指導は今後の保険診療を行うにあたって一度自分を振り返ることができて寧ろよかったのかもしれません。